Homeへ

食品からの放射能の検出についてどう考えるか?
 関澤 純 2011年3月20日朝7時

19日厚生労働省から食品衛生法の暫定基準値を超える放射能の検出発表がありました。
この発表について食品安全委員会から説明文も公表されています(文末)。
この文書では外部被ばく(東京ーニューヨーク間の飛行による宇宙線ばくろレベル:0.1ミリシーベルトや胃のX線検診の場合のばくろレベル:0.6ミリシーベルト)と比べて低い、あるいは政府官房の説明でもCTスキャン1回分くらいと説明していますが診断の目的で敢えてばく露を選ぶ場合と食品から摂取する場合と事情は違います。またここで放射性物質を体内に摂取した場合(内部被ばく:体内に残る)との違いや、放射線の単位としてベクレル(放射性同位元素の量を示す)とシーベルト(体内に吸収された時の影響を示す単位)の両方が出てきて換算をしているものの分かりにくいところがあります。

今回報告された茨城県産ホウレンソウと福島県産原乳中の放射性ヨーソ131による影響の可能性ついて、不十分なところもあるとは思いますが、現在分かる範囲で少し説明を加えます。お気づきの点がありましたらぜひお知らせください。

(1)まず暫定基準値とはそもそもどのようなものかを説明します。国際放射線防護委員会(ICRP:事務局ストックホルム)は、これまでの放射線障害についての研究から公衆の放射線防護には人為的に制御できず(自然放射能)、利益(飛行機利用やX線検診など)をもたらす場合を除き、放射線へのばくろを年間1から5ミリシーベルト以下に抑えることを勧告(現行は1990年のもの)しました。わが国でもこの勧告に沿い原子力委員会は放射性セシウムの防護基準を年5ミリシーベルトにしています。

(2)ここで制御できない自然放射能のレベルがどの程度であるかも知っておく必要があります。自然放射能は地域差が大きいですがわが国の平均では、宇宙線から0.38ミリシーベルト、空気中のラドンなどから1.3ミリシーベルト、大地(地球の放射能)から0.48ミリシーベルト、食品(昆布や野菜に比較的多い)に含まれる天然のカリウム40などから0.24ミリシーベルトの合計約2.4ミリシーベルトに年間被ばくしています。

(3)そこで今回の野菜や原乳汚染による追加の被ばくを考えてみます。ホウレンソウ中の放射線量は、ヨーソ131は1キログラムあたり最大15,020ベクレルとされています。ここでヨーソ131について、ベクレル単位からミリシーベルト単位に換算しないと比べられません。口から体内にとる場合の実効線量係数という換算数値(10万分の2.2)をかけますと、0.33ミリシーベルトという値が計算されます。次にこの最大に汚染されたと思われるホウレンソウを毎日1年間食べ続けた場合を想定すると、365日をかけ、一日に日本人が平均的に食べるホウレンソウの量が約15グラム(元の数値は1キログラム当たり)を考慮して1000分の15をかけると1.81ミリシーベルトになります。牛乳の場合は1キログラム当たり最大1,510ベクレルであり、一日に日本人が平均的に飲む量は約113グラムなので同じように計算すると年間飲み続けた場合には最大1.37ミリシーベルトのばくろになります。今回セシウムの検出濃度は暫定基準の違いを考慮して低かったので、とりあえずヨーソの結果のみを示しました。

(4)ホウレンソウの場合は現時点の汚染は風で運ばれた汚染物が表面に沈着したと推定されるので、洗ったりゆでたりすることでその多くは除かれると考えられますが、牛乳では同じ効果は期待しにくいでしょう。ただしここで最大に汚染されたものばかり1年間食べたり飲んだりし続けた場合を仮定したので、数回食べたり飲むことがあっても自然放射能の10分の1以下のレベルですので、健康への影響は深刻に考える必要はないと考えられます。厚生労働省の発表ではこれらの産品は出荷されていないと言っています。また放射性の物質は放射線を出しながらも安全な元素に代わってゆくことが知られています。ヨーソ131の場合は約8日で半分になり蓄積は比較的少ないですが、セシウム137は半分に減るのに約30年かかり、自然界のカリウム40の場合は12.5億年だそうです。

(5)健康影響ではチェルノブイリの事故では、ヨーソ131の摂取に関係したと思われる子供の甲状腺がん(甲状腺にヨーソが集まります)の増加が認められました。甲状腺が体重あたり成人より体重に比べ大きく成長期にあり、牛乳を多くとることを薦められている子供たちの場合には、汚染の可能性のある牛乳摂取は注意しなければなりません。成人では40歳以上ならばあまり影響は考えられないとされています。

参照した資料
1)食品安全委員会「東北地方太平洋沖地震関連情報」(平成23年3月19日)
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/emerg_genshiro_20110316.pdf

2)厚生労働省医薬食品局「放射能汚染された食品の取り扱いについて」(平成23年3月17日)

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e.html
3)厚生労働省医薬局「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」(平成14年3月)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r98520000015cfn.pdf

4)原子力百科事典ATOMICA:放射線影響と放射線防護
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-02-13
5)文部科学省web: 原子力・放射線安全確保。私たちは普段どのくらいの放射線を浴びているのですか?
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/emerg_genshiro_20110316.pdf

6)牛乳および乳製品摂取量(2007年3月30日)http://unit.aist.go.jp/riss/crm/exposurefactors/documents/factor/food_intake/intake_milk.pdf
f/houdou/2r9852000001558e-img/2r98520000015cfn.pdf