ご挨拶

NPO食科協20周年を迎えて

2022年6月17日

                        特定非営利活動法人食品保健科学情報交流協議会
                                   理事長 馬場 良雄

 NPO食科協は2002年1月に5名の発起人により提案され、同年7月31日に特定非営利活動法人食品保健科学情報交流協議会(略称NPO食科協)として登録され今年で20年を迎えます。この間ご指導ご鞭撻頂きました行政・食品衛生監視員の皆様、食科協会員・賛助会員の皆様、食科協理事・運営委員として活動して頂きました皆様にこころからお礼申し上げます。2002年当時、大規模食中毒事件やBSE等、食品の安全に対する信頼が揺らぎ、科学的に正しく理解納得される情報の重要性が改めて強く求められた頃でありました。食科協の設立は眞に時機を得たNPO法人の設立であったと思います。行政においても、2003年には食品安全基本法の施行、食品衛生法の大改正等、消費者の食に対する「安全・安心」確保の為に対応してきました。それらの法の施行・改正が食品事業者、食品衛生監視員等、食を取り巻く関係者に適切に理解され、行動されるためにNPO食科協の役割は意義あるものであり、力不足ながらも少しでもその役割に貢献できていればと思います。

 食品安全委員会でリスクアナリシスを行い、厚生労働省、農水省、消費者庁等の行政機関がリスクマネジメントを行うと共に内閣府を含めた行政機関、学術経験者、食品事業者及び消費者等が双方向でのリスクコミュニケーションを行う事により、食品の安全・安心に対する理解が深まることが期待されてきました。食品安全基本法施行後は全国各地で「リスクコミュニケーション」としてのパネルディスカッションの場が設けられ、私もパネリストとして数回参加させて頂きましたが、中々目に見える成果としては現れなかったように思います。2011年の東日本大地震に伴う福島原発事故による放射能汚染の際には、行政機関では、消費者の理解向上の為いち早く規格基準の改正を含め適切な情報発信を行って頂きましたが、風評被害の課題を含め、食品の「いわゆる安全・安心」について消費者に理解されるのに大変時間を要したと思います。

 20周年を機に食品安全確保の観点から「食品保健科学情報」とは何かについて改めて整理してみたいと思います。食品に求められる機能として「栄養」「おいしさ」「楽しさ」「利便性」「保存性」「適正価格」に加え近年では「機能性」も強調されることもありますが、「安全性」は常に全てに優先するものです。食品の安全性について「科学的データに基づき、食品の特性と食品の摂取実態に対応して規定し、規格基準等を定めているのが食品衛生法ですが、「安全な食品」とは何かについては食品に係る事故事例や新たな科学的データなどによって常に変化・改正されてきました。さらに近年の経済進展に伴うフードシステムの変化に対応して「科学的・合理的」に「原材料の調達から製造工程の管理、保管、流通に至る管理規定」を「事業者自らの責任で」規定し、遵守する事が2018年改正の食品衛生法で「HACCPによる衛生管理規定」として定められました。食品事業は事業規模の大小、食品の種類等々多岐にわたり「HACCP管理規定」と言っても多岐にわたり、まだまだ課題は山積していると思います。食品事業者が食品衛生法の規定を遵守しHACCPによる衛生管理(あるいはHACCPの考え方を取り入れた衛生管理)を徹底して製造・販売する事により、「安全な食品が提供されていること」を消費者が理解し信頼できるようになることが食品産業のあるべき姿だと思います。NPO食科協としてもそのようなあるべき姿をめざし、食品事業者、食品衛生監視員等の方々にも必要な情報提供に努めたいと思います。

 食品表示については「食品表示法」により消費者が食品の特性、内容、等正しく判りやすく把握できる様改正されてきていますが、法の目的に沿った表示となる様努める事が求められます。食品事業者には、表示によって誤解や優良誤認の無いように努める事が求められます。新たにガイドラインが示された「食品添加物無添加」の表示の在り方や「機能性表示食品」の表示の在り方などについても、優良誤認される事の無い適切に表示されるよう必要な情報発信をしていきたいと思います。

 少し食品から話は飛びますが、2020年からの新型コロナウイルス感染症の問題については連日報道され、いろんな「専門家」の解説、更には「有名人」による持論の解説などで何が真実かわからない時期が続きました。そんな中、チェーンメールによる「フェイクニュース」の拡散もみられました。また、2月24日からのロシアによるウクライナ侵攻に当たっても専門家の解説のみならず、「有名人」による持論がマスコミで流れておりました。この様にまだまた未知の課題が多い段階での「専門家」と称する人の意見、「有名人」による持論などにたいして何が正しいか冷静に聞く姿勢が求められると思います。マスコミが紹介する「専門家」は解説する課題に対し本当に科学的な知見を持っているか疑問のある場合もあります。ましてや「著名人」による持論は冷静な科学的専門知識に基づくものか疑ってみる必要があります。

 食品の安全性に対するリスクコミュニケーションについても「ゼロリスクの要求」と「食品の多面的特性・不確実性」との対比で、科学者、行政、食品事業者、消費者等全ての関与者の理解が一致しコミュニケーションが成立する事は困難な面があります。2003年の食品安全基本法制定以来多くの努力がはらわれていますが、いまだに多くの課題が残っており、NPO食科協では、リスクコミュニケーションについて20周年を記念して記念講演会を通して基本に立ち返り重視したいと思っております。

 以上の通り、「科学的データに基づく情報」だけでは全ての消費者に対しての「信頼される食品に係る情報」ならないものがあります。一方「信頼される情報」の為にはぶれない一貫した科学的に判断した信念に基づく情報発信の継続が求められるものと思います。NPO食科協は設立以来一貫してその姿勢を保ってきましたし、これからも新しく作成したコミットメントに沿って活動していきたいと思います。今後ともご指導・ご鞭撻宜しくお願い申し上げます。

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